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めまいの患者さんが最も不安に思うのは、脳の病気のことです。
しかし、めまいの原因としての脳は軽視されてきた感があります。
これらの見解は、脳のMR検査(磁気共鳴装置)が普及する以前に、CTスキャンではめまい患者の脳に病気が発見できなかった時代の産物だと思います。
脳が全身からの情報を統合したり、色々な指令を出す役割を持っていることは、医学的にはわかっていることです。
脳は、大まかにいって大脳、小脳、脳幹の三つから成り立っていますが、従来はめまいの関連は主に小脳を中心に論じられてきました。もちろん特殊な脳の病気(小脳梗塞、聴神経腫瘍など)は、それだけでめまいの原因になるとされていますが、それらの病気はきわめて稀です。小脳、その周辺に問題がなければ、めまいの原因は脳ではないとする意見が一般的でした。
ところが近年、MRを用いた研究によって、めまいには小脳よりも、大脳が関係しているという報告がアメリカより出され、日本でも、私どものこの方向での研究が、評価されつつあります。
アメリカの研究や私どもの成績でも、めまい患者では脳梗塞よりも、むしろ「白質病変」といわれるものが注目されつつあります。この白質病変といいますのは、脳の細胞が変成したもので、その原因は、目下不明です。
また、めまい患者の大脳には前頭葉という部分に萎縮も見られます。この部位は、感情の起伏や、発作的なてんかんみたいな病気とも関連している部位です。
めまいと脳との関係は、今後大きく見直されていくはずです。