めまいの原因が判らない時、多くの医師や患者さんは「心因性めまい」と考えがちです。しかしそれには誰もが納得していないはずです。 めまいが長引けば、気うつになるのは当たり前のこと。 ストレスが原因なら、今の時代医者は世間の悪口に耐えかねて皆、めまいに悩んでいるとは思いませんか?
こころについて
めまいの患者さんの中には、医師からこころの病気と診断されて、心療内科やメンタルコンサルタントに通っている人が多くいます。 心療内科で開業している友人が言うには、うつ気分で通院している患者さんの中には、めまいをもっている人が多いとのことです。
患者さんのほうもこころの病気といわれて、納得している人もいるかもしれませんが、私どものところに来るめまいの患者さんの多くは、どうしても「こころの病気であるはずがない」「私には特別な悩みはない」「催眠術にかけられても、隠しているような悩みはない」といって、こころの病気と診断されたことがいちばんのこころの病気の種だと思っています。
医師から、こころの病気だと診断あるいは宣告されて、本当にこころの病気になってしまった人の中には、ついに自殺した人もいます。
こころの病気というのは、自律神経失調症とか更年期障害と同じように医師が診断がはっきりしない時によく使う"ゴミ箱診断″と考えるべきでしょう。 いろいろな検査で原因がわからないときにはじめて使うべき言葉であって、めまいの患者さんの診察にあたった医師が、自分がわからないからといって安易に使うべきものではないと思います。
こうは申しましても、医師が、心理的な面から患者さんを観察しておくことが非常に重要なポイントであることは同感です。 けっして、こころがめまいに関係していないと思っているのではありません。 めまいの悪循環の原因にはなっていても、そもそものめまいの原因とは考えられないという意味です。
私どもで三年ほど前、めまいの患者さんの発病から当院受診までの時間経過を心理テストで調べたことがあります。そのときわかったことは、発病してから時間が経てば経つほど、検査のうえではうつ状態に近くなっているということです。
そもそもは、長い間めまいが治らないでいると、だんだん、憂うつな気分になるという当たり前のことです。
それよりも、めまいの人がめまいを発病する以前から、もともと前頭葉に関係した潜在的な障害があった可能性があります。その場合には、こころの病気とめまいは同時スタートの病気と考えられます。 なぜなら、前頭葉は人間の感情の起伏に大きく関与する部分だからです。
わかりやすくまとめますと、めまいの発病する前から、多少は性格的にうつ傾向であった人が、めまいの発病を契機にその心理状態がより増幅されたといえると思います。
めまいの治療上に心理的要因を考慮することはきわめて重要なことですが、こころの病気をめまいの原因とするのは、問題があると思います。