めまいと頭痛を合併している患者さんが少なくありません。ある程度の頭痛は誰もが経験したことのある一般的な症状ですので、頭痛を感じる人にめまいがあっても、あるいはその逆に、めまいのある人に頭痛があっても、“たまたま”と片付けてしまっていてもおかしくないでしょう。頭痛を長引くめまいの結果とする見方も否定できません。ところが、頭痛に対しての特別な治療をしなくても、くびこり対策を中心としためまい治療中に、がん固な頭痛が治ることもあります。めまいと頭痛の原因がくびに関係するという共通点を有しているのではないかと考えさせらす。
めまい患者さんの約40%に片頭痛があるとされています。逆に片頭痛を有する人の約20%にめまいがあるとも言われています。片頭痛を伴うめまいのことを「片頭痛関連性めまい」とする表現が用いられているぐらいです。 片頭痛はポピュラーな病名の割に、原因や定義のはっきりしない病気です。片頭痛には、典型的、普通型、群発頭痛などがありますが、典型的なものは少なく頭痛全体の約2%です。典型的なものは、頭痛発作前に“閃輝暗点”といわれる視野の中にギラギラと光るようなものが見え、それが拡大して行き中央部分が真暗になって見えなくなることがあります。大ざっぱに言って「反復性の拍動性の長時間続く頭痛」と理解しておけば良いでしょう。
症状の基本がズキズキとして血管拍動に対応した感じの頭痛であることから、血管性頭痛として分類されてきました。古くは脳血管の収縮によるとされていましたが、最近では収縮ではなく拡張によるとされています。その主な理由としては、頭痛発作時に脳血管収縮作用のある薬剤が有効なことが多いことです。商品名イミグラン、ゾーミック、レルパックス、マクサルトなどのトリプタン製剤が有効です。それでも、患者さんによってはこれらの薬剤が必ずしも有効でない場合もあり、一概に脳血管拡張によって説明できるものでもありません。
強い頭痛発作を生じる病気で片頭痛の亜型です。症状の特徴は「前頭部から目の奥にかけての激しい痛み」で、人によっては目がえぐられるようにも感じます。死にたいほどの痛みで「自殺頭痛」ともいわれます。頭痛発作は、30分程度と短いのですが、一度起きるとその後1週間〜1ヶ月ぐらいの間毎日繰り返します。 頭痛が反復することから、群発という大袈裟な名前がつけられていますがこの病気でも2割ぐらいの人は反復していませんので、診断は難しいことがあります。 一般的な片頭痛が女性に多いのに比して、中年男性に多く、喫煙、アルコール摂取と関係します。血中ヒスタミン増加、髄液中アセチルコリン増加が認められる点で片頭痛とは違った病気でしょう。めまい患者さんでこの種の頭痛を訴えることは少ないのですが、治療法も多少異なり見逃さないように注意しておくべき頭痛のひとつです。神経痛、ノイローゼ、くも膜下出血などと誤診され易い病気ですが、いずれにしても脳における異常の有無はチェックしておくべきでしょう。患者さんからすれば、めまいどころではなく脳外科や眼科を受診している可能性もあり、珍しい病気とされていますが実態はよく判りません。
慢性頭痛の半分近くにある頻度の高い頭痛です。名前の通り、頭蓋や後頚部に分布する筋肉の収縮が持続することによる頭痛です。
頭痛とするより “頭こり”“くびこり”に近いイメージのものです。頭がしめつけられる、頭が重い、圧迫される感じの痛みが徐々に始まり、ほぼ一日中あるいは数日間続きます。ザクザクとした血管拍動性頭痛とは異なりますが、両方が合併する場合もあります。
原因としては、頭頚部外傷、老視や乱視などの眼球屈折異常、ストレスなどがあるとされています。長時間のパソコン作業や細かい細工物仕事による目の疲れも関係しているでしょう。頭痛が治らないことがさらにストレスとなって悪循環を形成します。
この種の頭痛がめまいに合併することも多く、片頭痛以上にめまいと原因が共通している可能性があります。そのひとつの考え方として、「くび」の関与があります。首回りの筋肉の負担が連鎖的に筋収縮を生じるとしての“「頚性頭痛」”とする概念が重要です。
めまいの原因として「頚性因子」が多いという一面からは、頭頚部外傷、眼科的異常、ストレス、疲れ目なども「くびこり」を介して頭痛につながっていると考えられます。
頭痛の原因としてもっとも多いものです。多くは、大後頭神経に沿ったキリキリした痛み、圧痛や圧迫感を生じます。大後頭神経以外に、小後頭神経、大頭耳介神経、前頭神経も痛みの原因となります。後頭神経痛は“固い枕で長時間臥床した痛み”と似ています。くびから後頭部にかけての痛みです。筋収縮頭痛、頚椎症、むち打ち症、頭頚部外傷、歯科的疾患にも合併しますので、これらの頭痛を明確に区別することは困難です。 時には、眼窩部につながる三叉神経も侵されて後頭部痛、項部痛以外に眼の周辺の痛みや不快感を伴います。