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めまいを「脳内地震」と呼ぶ理由は、「ドス−ン」「グラグラ」といった症状が似ているというだけではありません。発症のメカニズムも地震発生の仕組みに近いと考えたからです。
詳しくは拙著「めまい 脳内地震のミステリー」(スパイス社刊)をご覧いただくとして、簡単にまとめてみます。
海底や陸地などの地球表面は、「プレート」と呼ばれる十数枚の岩盤で覆われています。各プレートは年間数センチの速さで別々の方向に移動しており、それぞれが押し合い、引き合う境界部には「ひずみ」のエネルギーが蓄積。限界を超えると一気に放出され、地震が発生するとされています。
具体的には、プレートの先端が跳ね上がったり、不安定な断層がずれて動き、振動が地表に伝わる仕組み。一般的には、放出されるエネルギーが大きいほど、また断層が地表に近いほど大地震になるとされています。
一方、脳の大部分を占める大脳の表面は、「灰白質」と呼ばれる神経細胞の層に覆われています。耳の平衡機能や目による情報を総括する中枢がある部分で、その下層には神経細胞の通り道である「白質」もあります。ちょうど地球のプレートのような構造です。
さて、脳の表面や深部で“何か”が起こり、既にお話しした「白質病変」の形で表れたと仮定します。その結果、大脳に「ひずみ」が生じエネルギーが蓄積。限界を超えて放出され、灰白質を通じて耳や目を刺激し、めまいが起きる。症状の程度やタイプは“震源地”との距離で決まる。私はそう考えています。
エネルギーの蓄積と放出は、その後も断続的に続き、さまざまな「脳内地震」が発生する。そう考えると、めまいが数年ごとに再発する理由も説明できます。
ただ地震に例えるだけでは、すべては説明できません。賢明な読者の方ならお分かりでしょう。
例えば血液、リンパ、脳脊髄(せきずい)液など体内の水分はどう関与するのか。海底地震と津波の関係に似ているのかどうか。こうした問題の解明が進めば、めまいだけでなく、原因不明とされる脳などの病気も、科学的本質が見えてくるはずです。