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めまいの検査法はいくつかありますが、最も大切なのは「脳MR検査法」です。
「磁気共鳴(MR)画像装置」を使い、磁場に対する脳の成分の反応を解析する検査で、脳の中を画像で見ることができるのが特徴。エックス線を使う「コンピューター断層撮影装置(CT)」と形は似ていますが、より精密な画像が得られる利点があります。
めまいがある人のMR画像には、共通した傾向があります。特定の撮影法を使うと、画像に白い斑点のようなものが写る「白質病変」という所見が見られるのです。「脳梗塞(こうそく)」の所見と似てはいますが別物で、脳梗塞との関連も現段階でははっきりしません。
直径三、四ミリの斑点が方々に散らばっているタイプ、チョウの羽のような形に連なるタイプがあり、「星空型」「バタフライ型」と私は呼んでいます。斑点の数もいろいろで、中には一ヵ所だけ「一番星」みたいに見えるケースもありました。
白質病変とめまいの関係が注目されてきた背景には、「脳ドック」の普及があります。さまざまな検査で脳の健康診断を行い、脳卒中、くも膜下出血、認知症などの予防に役立てるのが目的ですが、目立った脳の病気がない人でも、白質病変が見つかるケースが増えてきたのです。
最近は、脳の老化や空間、時間などの認識障害に白質病変が関与し、めまいの原因にも関係があることが少しずつ判明。めまい治療の現場では、この奇妙な“白い影”の実態解明が大きな課題になっています。
不思議なのは、白質病変はCTには写らず、MRだけに写ること。そして「解剖しても実態がはっきりしない」との海外報告があることです。組織や構造など“目に見える”存在ではなく、磁力にだけ反応する「脳内物質」のようなものなのかもしれません。
白質病変がめまいに及ぼす影響の研究は、まだ始まったばかりです。その正体を見極めることができれば、「脳内地震」の震源地やエネルギー源を特定する有力な手掛かりになることでしょう。